苦戦する神戸空港。

2007年02月18日/ ◎地域観光振興コンシェルジュ

苦戦する神戸空港。 国内97番目の空港にして、第3種空港(地方的な航空運送を確保するため必要な飛行場)では、日本初の市営空港(神戸市が建設・運営)・
神戸空港(愛称「マリンエア」)が16日、開港1周年を迎えた。
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 神戸市は当初、初年度の年間旅客数319万人と予測したが、実際
には目標に約50万人届かない270万人85%)にとどまる見通し。
また、開港から今年1月末までの平均搭乗率61%と、航空会社の
採算ライン60%をわずかに超えたが、11月以降は50%台。1月の搭乗率は開港以来最低の53%と
採算ラインを割り込んでいる

 札幌72%)、羽田70%)、沖縄56%)と主要3路線は比較的堅調だが、新潟、仙台、熊本、
鹿児島
の地方4路線は30~40%台と低迷。全日空は、新潟、熊本両路線の休止を決めた。
 また神戸市は、空港島83ha(現在の売却対象は約25ha)の土地売却などで建設費を賄う計画
だったが、これまでに売れたのはレンタカー会社への0.3haのみ。開港後は動きがない。
(2/16 神戸新聞)

 「空港ができたら旅客が来ると考えるのは単純すぎる。もっと努力が必要だ」と、昨年9月、
空港活性化を考える会議で旅行会社の1人が市に強く迫った。
 関西3空港(伊丹・関空・神戸)の06年の国内線搭乗者数は約2483万人で、前年対比81万人
3.4%。しかし、全国的な航空旅客の伸び(1~2%)を考えると神戸の“開港効果”は大きくない。
旅客を関西3空港で奪い合う結果になった。

 旅行会社の担当者は「3空港は『住み分け』ではなく、『競争』関係。市がPRなどに積極的に
取り組まないと、今後、太刀打ちできなくなる」
と指摘する。(2/16 読売新聞)

神戸市内のホテルの稼働率は、平均6.2ポイント増「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」
では、昨年2月から今年1月までの就航先の都道府県別来客数は、沖縄が前年の178%まで伸びた
のを最高に、7都道府県(北海道・宮城・東京・新潟・熊本・鹿児島・沖縄)平均で約3割の増加で、
「一定の開港効果はあったといえる」と回答。
主要交通機関神戸新交通ポートアイランド線(愛称「ポートライナー」)の1日あたりの利用者数が約4万9千人(06年2月~12月 前年対比34%増加)。
空港へのリムジンバスは、姫路や淡路島など6系統が撤退。
02年、約160億円の累積赤字を抱えて休止後、空港開港に伴い、市が「維持費の安い船に変え
れば、休止前の最低水準の月4万人利用でも採算はとれる」
と説明し、運航を再開した高速船
「神戸‐関空ベイ・シャトル」
は、7ヶ月間で約11万8千人(1ヶ月平均1万7千人)と目標の4割、
採算ラインの半分も割っている
(神戸市は15日、同社支援のため07年度2億3700万円の補助金を
計上)。
タクシー運行回数も予想の25%弱、レンタカー会社7社も苦戦が目立つ(2/17 神戸新聞)。
就航7都市から神戸を訪れた人の目的「ビジネス」が56%で、「観光」は17%にすぎず、
神戸市内で宿泊したのは半数未満の47%同市内を観光した人も24%(神戸新聞社が今月
実施の乗客アンケート調査)。
 現状、開港が観光にもたらした効果が低いといわざるを得ない。

 読売新聞が兵庫県内主要企業100社を対象にアンケートで、
出張などで主に利用する交通機関は、航空機との併用も含めて「新幹線」(74社)。「神戸空港」
(16社)、「関西、伊丹空港」(28社)。神戸空港を使わない理由は「便数が少ない」「交通の便が
悪い」
など。
地元経済への好影響について、71社が「ない」と回答。「ある」と答えた15社は「観光客が増えた」 (3社)、「ホテルの稼働率がアップ」(2社)と回答。
神戸市の需要予測には、54社が「そこまでの需要はなく、予測には無理がある」と回答。
「需要はあるが、掘り起こせていない」が19社。
関西に3空港が必要かどうかでは、「必要ない」が「あまり」と「全く」を合わせて7割近く。(昨年2月の
アンケートでは、同様の質問で「必要ない」との回答は29%で、半数近くが「わからない」と回答。)
空港島83haの土地売却について、神戸市の2社と阪神間の1社が「多少関心はある」と回答。
地元企業の同空港利用が進まず、冷めた目で見ている実態が浮かび上がったと報じている。
(2/10 読売新聞)

 『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)の全国・市「倒産危険度」ランキング(06年8月26日号)・
1位『ザ・ファクタ』(06年8月号)の「住民1人あたり潜在債務ランキング」3位にランクインして
しまっている神戸市
 06年9月、「J‐CASTニュース」神戸市行財政局財政部財務課に問い合わせたところ、
「震災があったため、公債費の使用が膨らんでいたのは事実。ただし、直ちに倒産するとは思っていないし、倒産するような赤字に至るような状況ではない。市も市債残高の削減や職員の人件費削減などで、倒産しないように努力しています。『週刊ダイヤモンド』の計算には問題があるし、
そのような指摘も実際にしました。」
という回答。
 神戸市長は、15日の記者会見で「地方路線のダイヤが窮屈だった。もう少しゆったりしていたら
・・・」
と路線減少の原因を苦々しく説明したというが、本当にそれだけが原因なのか。いずれにせよ
市の『ハコモノ』依存需要予測と現実、そして2年目。今後、観光振興やそれ以外のさまざまな
角度からの検証が必要だと思う。


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Posted by コンシェルジュ『J』 at 10:30│Comments(1)
この記事へのコメント
神戸空港が、赤字になることは、つくる前から、簡単に予想できた。しかし、当事者たちは、無理に理屈をつけてつくったのは明白。なぜ、神戸市民は、反対しなかったのだろうか
Posted by at 2007年04月08日 17:27
 
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