「美味し国」と「美し国」。

2007年03月17日/ ◎地域観光振興コンシェルジュ

 デスティネーションキャンペーン(DC)とは、デスティネーション=Destination(目的地・行き先)と
キャンペーン=Campaign(宣伝戦)の合成語で、JRグループと指定された自治体や観光業界が
協働で実施する大型観光キャンペーン
のことで、現在、4月30日まで「ちばDC」が開催されている。
 08年10月~12月に、県単独としては宮城県初の「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン
(DC)」
が開催されるが、DCのキャッチフレーズが8日、「美味(うま)し国 伊達な旅」と発表された。
県内の自然や食、美しい風景を表す「美味し国」と、伊達文化を感じさせる「伊達な旅」を組み合わせた
もので、「仙台・宮城のもつ食と文化の魅力、旅への期待感を表した」という。

 ところが、このキャッチフレーズが三重県・伊勢志摩キャンペーンのキャッチフレーズ「美(うま)し国、まいろう。」「うまし国」がかぶっており「できれば違う方が観光客にアピールできたのに」という戸惑いや、混同を懸念する声が上がった。
「美味し国」と「美し国」。  「美味し国」と「美し国」。

 伊勢志摩の「美し国」は、「日本書紀」で、当地方を「美し国」と呼んだことに由来し、キャッチフレーズ
自体を商標登録している。
 宮城のDC期間中、宮城と三重で同時に「うまし国」と銘打ったキャンペーンが展開される可能性が
あるが、これに対し、宮城県DC推進協議会事務局は「『美し国』と『美味し国』で漢字も違うので
問題ない」
、三重県観光連盟も「『うまし国』といえば三重というイメージが定着している」
余裕を見せる。
 仙台市内の旅行代理店は「『うまし国』というイメージが、先行する三重にできあがっているので、宮城と三重の中間に住む人に『うまし国』をアピールしても、三重に行ってしまうかも」と話している。
(3/10 毎日新聞)
 12日、村井嘉浩宮城県知事は会見で「DCのターゲットは関東の人なので(三重を)イメージ
しない。全く問題ない」
との見解を示した。(3/13 毎日新聞)

 「うまし国」が、伊勢志摩だと観光客にはっきりと認知されている訳ではないけれど、短いフレーズに
それぞれの「思い」や「こだわり」を込めて全国にアピールできるか。誘客には旅情を誘うキャッチ
フレーズが欠かせない
だけに、宮城県の観光業者の戸惑いの声も理解できる。
 1993年から現在まで続く、JR東海の京都観光キャンペーンのキャッチフレーズ「そうだ 京都、
行こう。」
は、電通のクリエイティブディレクター・佐々木宏氏作の不朽の観光キャッチフレーズ。
 佐々木氏は京都のイメージはどうも額縁的だから、動詞が入っていて、そして肉声ででるものが
1番いい
、と考えたとのこと。
 「京都へ行こう」じゃ、誰にでもできることだから「そうだ」を頭につけて「京都へ」ってところを「京都、」に
してみて完成したそう。
 凡人に分からないが、よいキャッチフレーズができる流れは興味深い
 
 ちなみに、現在開催中のちばDCのキャッチコピーは、「房総発見伝」
 岡山DC(4月~6月開催)は、「きっと新発見 もっと再発見 岡山の旅」
 ぎふDC(10月~12月開催)は、「いい旅 ふた旅 ぎふの旅」

「美味し国」と「美し国」。 最近でも、21日から滋賀県彦根市で開催される「国宝・彦根城築城
400年祭」
のキャラクターで、井伊家赤備えの兜をかぶった「ひこにゃん」の
「ゆるさ」が話題を呼び
、関連商品がバカ売れしたり、PRイベントに親子連れや若い女性が大勢つめかけ、毎回大盛況という不思議な現象が起きている。
キャッチフレーズやキャラクターが、イベント自体を盛り上げる要因には
なり得る
が、築城400年祭自体は盛り上がりが今ひとつという報道もある。
 宮城県は、「仙台・宮城DC」の経済波及効果を前年比700億円増を
見込んでいる
そうだが、観光振興が成功するか否かは、結局のところ
「地元の熱意」
 「仙台・宮城DC」に関して言えば、宮城の一極集中に思える仙台以外の地域の魅力をいかに
アピールできるかが、カギだと思う

 仙台・宮城の地域ブログ「だてブログ」でも、「だて男」さんらのDCを盛り上げようと取り組みに、
多くの地域ブロガーが賛同している。観光振興の視点から「地域ブログ」のできることはたくさんある
と思う。是非、地域ブログでDCを、そして地元の観光を盛り上げて「地域ブログ」の可能性を
広げて欲しい
。 

■追記(3/20)
 20日の産経新聞によると、三重県野呂昭彦知事は20日の定例記者会見で、キャッチフレーズの
「うまし国」がかぶった点について、近く東京事務所を通し宮城県に抗議する方針を明らかにした。
 野呂知事は「商標登録の申請もしている。三重県で使っていることも議論になりながらこういう
ことになって不愉快」
不快感をあらわにした
 一方、宮城県観光課「『うまし』という表現は一般的。自然の恵み伊達文化を伝えるための8
文字で1つのキャッチフレーズとしてとらえている」
としている。宮城県側も商標登録を申請中という。

■追記(3/27)
 27日の東京新聞によると、三重県東京事務所の戸神範雄所長は26日、同じ都道府県会館(東京都
千代田区)にある宮城県東京事務所に今野純一所長を訪ね、「誠に遺憾である」との野呂昭彦知事の
意向を村井嘉浩宮城県知事に伝えるよう文書で申し入れた。
 今野所長は「さっそく、知事に伝えたい。こういう事態になって戸惑っている」と応じたが、
「あくまでも『美味し国 伊達な旅』というひとまとまりのキャッチフレーズとして使いたい」と述べ、
撤回する考えのないことを強調した
 戸神所長は、伊勢志摩地方を「美し国」と呼んだ日本書紀の記述などを説明した資料も提出。
村井知事が12日の会見で述べた「通常は、関東の人も(「うまし国」と聞いて三重県を)そんなに
イメージされない」
との発言は「配慮に欠ける」などと抗議
 今野所長は面会後、記者団に「(三重県と)ことを荒立てて張り合おうということではない。観光は
お互いに競い合って振興させていこうということだから、お互いに協力できる分野は多いのでは」

と語った。

■追記(4/11)
 11日の伊勢新聞によると、三重県の野呂昭彦知事は10日の記者会見で、宮城県の村井嘉浩知事から
謝罪の電話があったことを明かした。村井知事は「ご迷惑をお掛けした」と話したといい、野呂知事は
「真摯に受け止め、大人の対応をしたい」和解する意向を示した
 三重と宮城の「うまし国論争」に終結宣言が打たれた
 野呂知事によると、村井知事本人から10日昼ごろ、電話があった。「ご迷惑をお掛けした。配慮が
足りなかった」
などと謝罪。08年10月~12月に展開する「仙台・宮城DC」については「取り下げるのは
かえって問題が大きくなるので難しい」
として理解を求めた上で、キャンペーンを終えた翌09年以降は
「三重県の意向に配慮しながら必要に応じて相談したい」と述べた。
 その上で「これを機に両県の連携を深めたい」とも述べ、宮城県の東京アンテナショップ
「コ・コ・みやぎ」(池袋)で三重県の観光ポスター掲示や物産を取り扱うことなどを提案したという。
 野呂知事は「(村井)知事が直接おわびの言葉を言われたので、真摯に受け止め大人の対応を
したい」
と受け入れ、「今後は十分理解し合える中で、連携を深められればいい」と前向きな考えを
示した。「『美し国』は由緒ある重い言葉。県民はとても誇りに思っている」などとの思いも伝えたと
いう。


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Posted by コンシェルジュ『J』 at 15:01│Comments(2)
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続・宮城県知事と文化水準【The Perch of Information】at 2007年03月24日 14:13
この記事へのコメント
はじめまして。
さきほど、他のプログで、この件に関して三重を侮辱するかのような内容を見てしまったので、こちらのを拝読して少しほっとしています。

私の周辺(私も含む)ではちょっとした騒ぎになっています。
感情的にならず、自分たちにできることをコツコツやっていきましょう、という雰囲気で意見交換中です。
Posted by 伊勢の人 at 2007年03月22日 18:34
コンシェルジュ「J]さま。はじめまして。

トラバありがとうございます!

本日の某新聞の投稿でもこの件について反対の意見が、もっと地域住民を巻き込んだキャッチフレーズの決め方が大切と思いました。

宮城の足元にある言葉(方言)を盛り込んでも良いかと。。個人的に思います。
Posted by 恋矢 at 2007年03月31日 11:26
 
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