人気列車がもたらした観光波及効果。

コンシェルジュ『J』

2007年04月24日 22:32

 24日の河北新報『JR五能線しらかみ号開業10年 ドル箱列車に』の記事。

 JR東日本が秋田~弘前・青森間を五能線経由で運行する臨時快速
列車「リゾートしらかみ」号が、4月で開業10周年を迎えた。昨年10月
には利用者数が通算50万人を突破するなど人気が定着し、JR東日本の
在来路線では今やシンボル的存在。成功の背景には、風光明美な
地理的条件と、誘客に取り組む沿線自治体の熱意がある


 14日、「今日で3回目(の乗車)。広い窓から景色を眺め、仲間と
ゆっくり旅を楽しめるのがいいわね」
。知り合い5人と青森県鰺ケ沢町
まで小旅行するという、由利本荘市の主婦は、大きめの座席でくつろぎ
ながら、しらかみ号の魅力を語った。
 観光シーズンにはまだ早い時期だが、間もなく迎える黄金週間を境に、秋田駅には全国各地から
しらかみ号の利用客がやって来る。石畳の海岸線や日本海に沈む夕日、野趣に富んだ温泉、世界遺産の白神山地など、沿線地域に点在する魅力的なスポットが目当てだ。
 JR東日本秋田支社営業課の柴田寿文副課長は「特にゴールデンウイークと夏休み期間、
紅葉やハイキング時期の秋がハイシーズン。乗車予約ができないことも珍しくない」
盛況ぶりを
話す
集客率は1997年の開業時から5、6割台で推移する堅調さで、当初、「青池」編成のみ
だったダイヤは、03年に「橅」編成、06年に「くまげら」編成を投入。管内では唯一、全国的にも珍しい
「1線区・3編成」を実現した


 秋田新幹線「こまち」の2次アクセスとして同時開業したしらかみ号は現在、乗客の6割以上が
首都圏からの観光客
。町内に4カ所の停車駅がある深浦町(青森県)の八木橋健観光課長は
「しらかみ号が地元にもたらした観光波及効果は大きい」と指摘。合併前の旧深浦町と旧岩崎村を
合わせ、97年に約160万人だった観光客数はこの10年間で210万人台まで増加した

 「日本一のじゅんさいの里・森岳温泉入浴」(森岳駅)、「ブナ林散策・留山トレッキング」(あきた
白神駅)、「郷土料理“チャンチャン焼き”と温泉入浴体験」(深浦駅)など、計21の停車駅では
それぞれ、次の列車が来るまでに乗客が楽しめるよう工夫を凝らす。現在、50種類の観光メニューが
あり、「当初は十二湖(深浦町)のトレッキングツアーなど数えるほどしかなかったことを思えば、
誘客に掛ける沿線自治体の熱意は大きく、敬服するばかり」
と柴田副課長。4月に新たに停車駅と
なった岩館駅がある八峰町(秋田県)では、「漁火の館」を活用したブルーツーリズム(漁業体験)
活用した観光メニューを新設する
など、話題は尽きない。

 「在来線の成功モデル」(JR東日本・吉田幸一秋田支社長)には、課題もある。平日と冬季の誘客
促進と、新たな観光戦略
団塊の世代を狙った特定商品などで平日誘客は改善に向かって
いるが
、運休が珍しくない厳寒の時期の観光促進には限界がある。2010年には、東北新幹線八戸~
新青森駅が開業予定で、秋田駅中心だったしらかみ号発着の玄関口が、青森駅に入れ替わる可能性は高い。
 沿線自治体の中心観光施設の1つである滞在型リゾート施設「ウェスパ椿山」を運営する深浦町の
第三セクター・ふかうら開発の石沢優専務は言う。「観光メニューはこの10年でほぼ出尽くした感が
ある。今後はそれらにどう付加価値を付けていくのか、その真価が問われてくる」
と。

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