人気列車がもたらした観光波及効果。
24日の
河北新報に
『JR五能線しらかみ号開業10年 ドル箱列車に』の記事。
JR東日本が秋田~弘前・青森間を
五能線経由で運行する臨時快速
列車
「リゾートしらかみ」号が、4月で開業10周年を迎えた。昨年10月
には利用者数が通算50万人を突破するなど人気が定着し、JR東日本の
在来路線では今やシンボル的存在。
成功の背景には、風光明美な
地理的条件と、誘客に取り組む沿線自治体の熱意がある。
14日、
「今日で3回目(の乗車)。広い窓から景色を眺め、仲間と
ゆっくり旅を楽しめるのがいいわね」。知り合い5人と青森県鰺ケ沢町
まで小旅行するという、由利本荘市の主婦は、大きめの座席でくつろぎ
ながら、しらかみ号の魅力を語った。
観光シーズンにはまだ早い時期だが、間もなく迎える黄金週間を境に、秋田駅には全国各地から
しらかみ号の利用客がやって来る。石畳の海岸線や日本海に沈む夕日、野趣に富んだ温泉、世界遺産の
白神山地など、沿線地域に点在する魅力的なスポットが目当てだ。
JR東日本秋田支社営業課の柴田寿文副課長は
「特にゴールデンウイークと夏休み期間、
紅葉やハイキング時期の秋がハイシーズン。乗車予約ができないことも珍しくない」と
盛況ぶりを
話す。
集客率は1997年の開業時から5、6割台で推移する堅調さで、当初、
「青池」編成のみ
だったダイヤは、03年に
「橅」編成、06年に
「くまげら」編成を投入。管内では
唯一、全国的にも珍しい
「1線区・3編成」を実現した。
秋田新幹線「こまち」の2次アクセスとして同時開業したしらかみ号は現在、
乗客の6割以上が
首都圏からの観光客。町内に4カ所の停車駅がある
深浦町(青森県)の八木橋健観光課長は
「しらかみ号が地元にもたらした観光波及効果は大きい」と指摘。合併前の旧深浦町と旧岩崎村を
合わせ、97年に
約160万人だった観光客数はこの10年間で210万人台まで増加した。
「日本一のじゅんさいの里・森岳温泉入浴」(森岳駅)、
「ブナ林散策・留山トレッキング」(あきた
白神駅)、
「郷土料理“チャンチャン焼き”と温泉入浴体験」(深浦駅)など、計21の停車駅では
それぞれ、次の列車が来るまでに乗客が楽しめるよう工夫を凝らす。現在、50種類の観光メニューが
あり、
「当初は十二湖(深浦町)のトレッキングツアーなど数えるほどしかなかったことを思えば、
誘客に掛ける沿線自治体の熱意は大きく、敬服するばかり」と柴田副課長。4月に新たに停車駅と
なった岩館駅がある
八峰町(秋田県)では、「漁火の館」を活用した
ブルーツーリズム(漁業体験)
を
活用した観光メニューを新設するなど、話題は尽きない。
「在来線の成功モデル」(JR東日本・吉田幸一秋田支社長)には、課題もある。
平日と冬季の誘客
促進と、新たな観光戦略。
団塊の世代を狙った特定商品などで平日誘客は改善に向かって
いるが、運休が珍しくない
厳寒の時期の観光促進には限界がある。2010年には、東北新幹線八戸~
新青森駅が開業予定で、秋田駅中心だったしらかみ号発着の玄関口が、青森駅に入れ替わる可能性は高い。
沿線自治体の中心観光施設の1つである滞在型リゾート施設
「ウェスパ椿山」を運営する深浦町の
第三セクター・
ふかうら開発の石沢優専務は言う。
「観光メニューはこの10年でほぼ出尽くした感が
ある。今後はそれらにどう付加価値を付けていくのか、その真価が問われてくる」と。
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