旅行各社の「場貸しモデルサイト」新設と思うこと。

2006年12月01日/ 旅行・宿泊予約サイト

 大手旅行各社がホテルなど宿泊施設に料金やプランの企画を任せ、手数料だけ徴収する
宿泊予約サイトを相次ぎ開設している
。楽天トラベルなどと同じ形態の予約サイトで、売れ残りを
格安販売するなど従来の自社仕入れ方式ではできなかった柔軟な値付けが可能になる。
急成長するネット勢を追撃する狙い。

旅行各社の「場貸しモデルサイト」新設と思うこと。 JTBは2007年3月、新たな宿泊予約サイト「るるぶ
トラベル」
を開設する。旅館、ホテル、ビジネスホテルの
1万軒を掲載。サイトでは宿泊施設が客室を直販する
仕組みで、プランや料金を自由に設定する。このため
宿泊日間際に価格を下げるなど機動的な値付けが
可能になる。JTBは販売額の6~10%を宿泊施設から
受け取る。
 従来はJTBが年間契約で確保した客室を掲載してきた。売れ残ったプランは原則として2週間前に
施設側に返還(返室)。販売時に得る手数料率も15%と高かった
 実はこれまでもビジネスホテルに限って直販仲介型サイトを展開し、取扱額は06年3月期で
109億円
だった。来春稼動の新サイトで旅館やホテルを追加し、08年3月期の取扱額として
300億円を見込む

 近畿日本ツーリストは来年1月、宿泊施設1万件を掲載する「ステイプラス」を開設する。
手数料率は6~8%07年度12月期の取扱高は40億円を目指す。これまでも「楽宿」
名称で直販仲介型を展開していたが、契約施設が1300軒と少なく、手数料率も原則15%前後
と高め。取扱額も年間10億円にとどまっていた
 阪急交通社は11月に「The お宿」開設。手数料率は5%と業界最低水準に抑え、
販売価格の低下を促し、利用増を図る。08年3月期で60万人の利用を見込む。
 
 旅行各社の「場貸しモデルサイト」新設と思うこと。 
 富士キメラ総研によると、ネットを利用した旅行予約(国内外の
宿泊とパッケージツアー)の05年の市場規模は前年比13%増の
7550億円
。大半は国内の宿泊予約が占めている。

 旅行各社が相次いで宿泊予約の新サイトを開設する背景には、
割安感を武器に楽天などネット専業大手が急速に勢力を伸ばしていることへの危機感がある。
 楽天トラベル05年12月期の取扱高は1429億円で前期比26%増。一方、旅行大手は
収益源の団体旅行が低迷しており、個人客を取り込むためネット販売を強化する必要に迫られている。
 そのため旅行大手は従来の年間契約による宿泊プランのサイト販売を継続し、安定的に客室を
提供できるようにする。日本旅行「宿ぷらざ」で直販仲介型の宿泊予約を受け付ける一方、
従来の仕入れ販売型の「宿なび」も展開している。直販仲介型の「品ぞろえの不安定さを、
従来の仕入れ型で補う両面作戦を続ける」
(メディアミックス営業部・塚田秀春チーフマネージャー)
構えだ。
 ただこうした動きは、ブランド力を盾に旅行大手が握っていた商品企画が宿泊施設側に開放される
ことを意味している。
 宿泊予約の価格体系の崩壊が一段と加速し、旅行大手自身の収益を支える仕入れ販売に
打撃を与えかねない危険もはらむ。
(11/29 日本経済新聞・12/1 日経MJ)

 旅行各社が相次いで「直販仲介型サイト」を新設する背景は分かるが、要は各サイトがどれだけ
他サイトと異なる利便性なりを消費者にアピールでき、「独自化」を図れるか
である。
 どのサイトを見てもAホテルはすべて同じ価格で、同じサービスででは消費者にとって意味がない。
ただ「独自化」のすべての答えが「他サイトよりも格安」ということではないと思う。
 記事には「旅行大手が握っていた商品企画」とあるが、それは主に「価格設定」の部分であり
それ以外の「商品企画」を、そもそも旅行会社が「主導権を握っていたのか」ということである。
 旅行会社にとって「企画」とは、「他社がマネできないような独自商品」であり、私もこうした宿泊
商品の仕入・造成を担当したが、残念ながら「企画力」のある担当者だったとは今もって思えないし、
「旅行」に携わるものは、提供する上でこの「企画力」は常に養っていかなくてはと感じる。
同じ思いを抱く、仕入・造成担当も少なからずいると思う。
 今頃、関西に行けば旅行各社の「カニカニ」な商品がたくさんある。「カニ」も1つの立派な定番企画と
いえば聞こえはいいが、目新しさもないし、何年も前から同じような内容だ。
 個人的な思いを言えば、宿泊施設は良くも悪くも旅行会社にとっては「狸」だ。「あなたの会社の商品
だけは特別なプラン」とかいうが、宿泊施設が生きていく上での、ウソ半分として受け止めなくては
いけないし、額面どおり受け取らないことを教えられた。宿泊施設にとって本音は「直販仲介型サイト」
ではなく
、全く手数料を払わなくていい「直販サイト」=「宿泊施設自身のサイト」で客室が
うまっていくことが1番の理想だということ。ただ客観的に見て、プランを施設任せにするほど、
全ての施設側に「企画力」があるとは思えない。そういう「宿泊施設単体を販売する企画力を
旅行会社が放棄している」
のだという認識は、旅行各社がしっかりと持つべきだと思う。
 時代の流れとして「直販仲介型サイト」はやむなしだが、そろそろ旅行会社に身を置くそれぞれが、
「じゃあ旅行会社って、社会に何をするの?」を再度考え直さないと、10年後は全く違った世界に
なっている思う。


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Posted by コンシェルジュ『J』 at 12:00│Comments(0)
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