36億円の「宇都宮城」、復元。

2007年03月25日/ ◎地域観光振興コンシェルジュ

 22日の東京新聞に「活性化の“本丸”になれる?『宇都宮城』25日開城」の記事。
 
 宇都宮城「関東七名城」の1つに数えられ、1622年、徳川家康の宿老・本多正純が秀忠暗殺の
嫌疑をかけられ、改易の発端となる「釣天井事件」(実際は「釣天井」はなかった)の舞台として知られ、
1868年、戊辰戦争の激戦で炎上・焼失。昭和に入って内堀も埋め立てられ、城址には土塁がわずかに
残っていただけであった。
36億円の「宇都宮城」、復元。 1996年、宇都宮商工会議所などを中心に城の復元を
求める声が上がり、市は01年、一部復元を決定。03年から
着工した。一方で、商議所関係者らを中心に市民組織
「よみがえれ!宇都宮城 市民の会」もつくられ、市は毎年
約1500万円を補助してきた。総工費36億円。うち1億円を
1口3千円の瓦の記名や1口1万円の「城主証」などの市民からの復元募金を、5億円をミニ公募地方債で
集めた。
 市民の会の藤井清会長は「特徴のない街には人は集まらないし、人材も育たない。宇都宮城は、
市民の心のよりどころにもなる」「復元を機に市や城の歴史に興味をもってほしい。将来的には
すべてを復元したい」
と。
 今回、復元されたのは木造2階建て清明台、富士見櫓という2つの櫓とそれを結ぶ土塀、土塁、お堀。
ただ、釣天井を含む本丸は「史実にない」(市担当者)として、造られなかった。
 年間の観光客数を、市はなんと「約60万人」と見込む。しかし、世界遺産で国宝の姫路城でも、
05年度の年間観光客数は約77万人にすぎないという。
 姫路城の担当者は東京新聞の取材に「宇都宮城といえば釣天井事件ですよね。えっ、釣天井は
なしで、やぐらだけで60万人ですか…。まあ姫路城と比べてはダメですよ」
と話す。
 さらに宇都宮城は入場料を取らないため、直接的収入は得られず、逆に光熱費、警備費などで年間
約4600万円の維持費がかかる

 宇都宮市の担当者は「宇都宮は千年近い歴史があるのに、市民がそれを実感できていない。
ギョーザだけでない宇都宮のイメージをつくり上げ、市民の街への愛着が強まれば」
と話し、
プライスレス(お金で買えない価値)な意義を強調。
 付近の飲食店経営者は「お城から多少はお客さんが流れてくるかも」と期待を込めつつも、
「ずっと城はなかったわけで、特にお城に関する由緒や名品があるわけじゃないし、どう生かして
いけばいいのか分からない」
と戸惑いを見せる。
 宇都宮大陣内雄次助教授(地域計画)は「宇都宮城だけではとうてい60万人も観光客を
呼び込むことはできない。城とプラスアルファの魅力が街自体に必要だ。中心市街地活性化に
結びつけるには、城に合わせた景観の街並みや商品の構成など、市民自らの努力がもっと
求められる」
と厳しい指摘した、という。

 地域の観光振興策の1つとして、城が復元される動きは最近高まっているが、日本人は「城=天守閣」
のイメージが強く、史実とは異なる天守閣が復元されたり、史実に天守閣そのものがないのに
建ててしまう事例もある。やはり史実に忠実な城が復元されて、はじめて真の観光振興の一歩、かと

 宇都宮市の観光客入込数は、2006年で1360万人(栃木県商工労働観光部資料による)。意外にも日光よりも215万人も多い。言わずと知れた「ギョーザ日本一の市」だが、先月、1世帯当たりの年間
消費額が宇都宮市民の3倍以上だったというのが根拠で、静岡県浜松市の浜松餃子学会が
「ギョーザ日本一」を宣言
宇都宮の「日本一」の座が脅かされている
 宇都宮城を、ギョーザに続く観光の柱としたい市の意気込みは分からなくはないが、折角市民参加で復元された36億円の城。60万人という割と無茶とも思える数値目標を前に、費用対効果を
問われて、城下で一揆が起きたり、炎上してしまわないことだけを祈りたい


■宇都宮城址公園  地図はこちら


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Posted by コンシェルジュ『J』 at 21:30│Comments(0)
 
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