一休の「未踏のニッチ市場開拓」戦略。
2007年03月19日/ 旅行・宿泊予約サイト
19日の日経MJの『売り手の考え』欄に一休・森正文社長のインタビュー
記事が掲載されている。
■楽天やヤフーが高級ホテル予約に力を入れ始めたが。
「楽天やヤフーはサイトの知名度がありますが、大きな脅威になるとは思っていません。3月末
開業の『ザ・リッツ・カールトン東京』の予約を2月から始めました。当初は慎重にやろうと考え、
それほど営業に力を入れたわけではないのですが、最初の1日で獲得した予約数は400超。
他のサイトは数十件と聞いています。(高級ホテルで培った)当社の評価の結果かなと思って
います。
「サイト運営で大切なのは現場に行くことと考え、私も一社員としてホテルや旅館を訪ねて
います。旅館のおかみさんに会えば、景気も周囲からの評判で分かります。ある旅館から
『上場したからって収益をあげるために変な旅館入れないでよ』と言われ、契約する施設を
改めて見直すこともありました」
■現場の声を聞く中で生まれた成果は。
「昨年から始めた高級レストランの予約サイトがそうです。ホテルの人に悩みを聞いたら、
ホテル内のレストランの調子が良くないという。ただ話を聞くと『一般の飲食店の中に埋没する
危険があるのでぐるなびのような飲食店情報サイトには入りたくない』という声が少なくない。
一休が始めた当初にホテルが抱えていた悩みと同じことをいうので、高級ホテルサイトを始める
ことにした」
■期待通りには予約が獲得できていないようだが。
「レストランは軌道に乗るまで3年ぐらいかかると覚悟しています。米国には『オープンテーブル』
というレストランの即時予約サイトがありますが、それもスタートとしてから3年間は鳴かず飛ばずで、その後に伸びていきましたから」
「今契約しているレストランは約300軒。今後は接待向け、恋人同士向けなど使い分けができる
ようにしていきたい。恋人同士向けも、今はプロボーズ時に使うような、高級なレストランしかない
ので、もっと気軽に利用できる店も取り込んでいくつもりです」
■景気が回復する中でホテルが宿泊サイトに提供する客室数を減らすこともあるのでは。
「私たちの最大のリスクはホテルの部屋がとれないことです。ホテルはそもそも一休を使いたく
ない。黙っていても自社が定価で完売できるのが1番いいはずです」
「ただ都心のホテルでも満室になるのは100日もないといわれています。外資系ホテルも
相次いで開業するので、客室の提供は今後全体的に増えると思います。国内のホテルや旅館は
JTBなどの代理店との古くからの付き合いやしがらみもあり、一休への客室割り当てが
限定されるうらみがありますが、ザ・リッツ・カールトン東京の例に見るように一休にどんどん
売ってくれと言ってきます。(好況が続いたとしても)心配していません」
■一定数の客室提供を義務付ける契約形態は考えていないのか。
「ホテルは基本的に決められた数の客室をブロック提供することを嫌がります。新設のホテルは旅行会社へのブロック提供をがんがん削っています。1、2部屋しか渡さないところもある。
旅行会社の仲介手数料も高いですからね」
■海外ホテルの宿泊予約を始める意向は。
「今のところはないですね。ニーズはあると思うんですけど。ホテル側はどんどん部屋を一休に
提供するから(海外の予約も)やってくれといいます。ただ今はシステム面で手が回らない。
そこが社員30人の会社の弱さですね」
「とにかく一休は『ブルーオーシャン』戦略でいきたいと思っています。誰も泳いでいない海は
水も透明できれい。でも色々な人がかぎつけて、たくさんの人が来るようになると、海は汚れる。
小さくてもいいから、だれもいないきれいな海で泳いで、そこから(既存事業との)関連を生み
出していきたい。宿泊予約と結びつけた通販など人がやっていないことをやろうと考えています」
■未踏のニッチ市場を開拓する戦略ですね。
一休のPER(株価収益率)は50倍程度と依然として市場のからの期待は大きいようだが。
「(PERは)いずれどこかで収れんしますよ。今目指しているのは昔のソニーみたいな新しい
ものを次から次へと生み出す組織をつくることです。生み出すサービスは一休とは全く別のもの
でもいい。これから一休に入ってくる新しい人にどんどん新たな事業を託したいと思っています」
【業績データから】
07年3月期売上高22億円(前期比18%増)、経常利益13億円で
いずれも過去最高を更新する見込み。経常利益率は60%を超え、
2月の東証マザーズから一部に指定替えされた。一休の会員は男性・
平均42歳、女性・平均37歳で可処分所得が多い層が中心。
昨年末時点で会員数は130万人を突破。
ホテルが景気回復の波に乗り自社販売の客室を増やしたことで、
一休の1施設あたりの客室在庫が前四半期に減少するなどの
課題がみえてきた。高級レストランの即時予約サイトの利用は
まだ思うように伸びていない。他の宿泊予約サイトとの競合が激しく
なる中で、宿泊サイトの強化だけでなく新たな収益源の確率が求められている。(中村正毅)
「数を目標とした営業はしない。新たな挑戦で楽天などとの差別化を進める」と独自路線を
貫く森正文社長の考えは、旅行業に携わった身として参考になるべき点が非常に多く、
現在の自分に多くの影響を与えている。いろいろな宿泊予約サイトが淘汰された中での、
一休の『ブルーオーシャン』戦略とその経常利益率には、ただただ舌を巻く思い。
記事が掲載されている。
■楽天やヤフーが高級ホテル予約に力を入れ始めたが。
「楽天やヤフーはサイトの知名度がありますが、大きな脅威になるとは思っていません。3月末
開業の『ザ・リッツ・カールトン東京』の予約を2月から始めました。当初は慎重にやろうと考え、
それほど営業に力を入れたわけではないのですが、最初の1日で獲得した予約数は400超。
他のサイトは数十件と聞いています。(高級ホテルで培った)当社の評価の結果かなと思って
います。
「サイト運営で大切なのは現場に行くことと考え、私も一社員としてホテルや旅館を訪ねて
います。旅館のおかみさんに会えば、景気も周囲からの評判で分かります。ある旅館から
『上場したからって収益をあげるために変な旅館入れないでよ』と言われ、契約する施設を
改めて見直すこともありました」
■現場の声を聞く中で生まれた成果は。
「昨年から始めた高級レストランの予約サイトがそうです。ホテルの人に悩みを聞いたら、
ホテル内のレストランの調子が良くないという。ただ話を聞くと『一般の飲食店の中に埋没する
危険があるのでぐるなびのような飲食店情報サイトには入りたくない』という声が少なくない。
一休が始めた当初にホテルが抱えていた悩みと同じことをいうので、高級ホテルサイトを始める
ことにした」
■期待通りには予約が獲得できていないようだが。
「レストランは軌道に乗るまで3年ぐらいかかると覚悟しています。米国には『オープンテーブル』
というレストランの即時予約サイトがありますが、それもスタートとしてから3年間は鳴かず飛ばずで、その後に伸びていきましたから」
「今契約しているレストランは約300軒。今後は接待向け、恋人同士向けなど使い分けができる
ようにしていきたい。恋人同士向けも、今はプロボーズ時に使うような、高級なレストランしかない
ので、もっと気軽に利用できる店も取り込んでいくつもりです」
■景気が回復する中でホテルが宿泊サイトに提供する客室数を減らすこともあるのでは。
「私たちの最大のリスクはホテルの部屋がとれないことです。ホテルはそもそも一休を使いたく
ない。黙っていても自社が定価で完売できるのが1番いいはずです」
「ただ都心のホテルでも満室になるのは100日もないといわれています。外資系ホテルも
相次いで開業するので、客室の提供は今後全体的に増えると思います。国内のホテルや旅館は
JTBなどの代理店との古くからの付き合いやしがらみもあり、一休への客室割り当てが
限定されるうらみがありますが、ザ・リッツ・カールトン東京の例に見るように一休にどんどん
売ってくれと言ってきます。(好況が続いたとしても)心配していません」
■一定数の客室提供を義務付ける契約形態は考えていないのか。
「ホテルは基本的に決められた数の客室をブロック提供することを嫌がります。新設のホテルは旅行会社へのブロック提供をがんがん削っています。1、2部屋しか渡さないところもある。
旅行会社の仲介手数料も高いですからね」
■海外ホテルの宿泊予約を始める意向は。
「今のところはないですね。ニーズはあると思うんですけど。ホテル側はどんどん部屋を一休に
提供するから(海外の予約も)やってくれといいます。ただ今はシステム面で手が回らない。
そこが社員30人の会社の弱さですね」
「とにかく一休は『ブルーオーシャン』戦略でいきたいと思っています。誰も泳いでいない海は
水も透明できれい。でも色々な人がかぎつけて、たくさんの人が来るようになると、海は汚れる。
小さくてもいいから、だれもいないきれいな海で泳いで、そこから(既存事業との)関連を生み
出していきたい。宿泊予約と結びつけた通販など人がやっていないことをやろうと考えています」
■未踏のニッチ市場を開拓する戦略ですね。
一休のPER(株価収益率)は50倍程度と依然として市場のからの期待は大きいようだが。
「(PERは)いずれどこかで収れんしますよ。今目指しているのは昔のソニーみたいな新しい
ものを次から次へと生み出す組織をつくることです。生み出すサービスは一休とは全く別のもの
でもいい。これから一休に入ってくる新しい人にどんどん新たな事業を託したいと思っています」
【業績データから】
07年3月期売上高22億円(前期比18%増)、経常利益13億円で
いずれも過去最高を更新する見込み。経常利益率は60%を超え、
2月の東証マザーズから一部に指定替えされた。一休の会員は男性・
平均42歳、女性・平均37歳で可処分所得が多い層が中心。
昨年末時点で会員数は130万人を突破。
ホテルが景気回復の波に乗り自社販売の客室を増やしたことで、
一休の1施設あたりの客室在庫が前四半期に減少するなどの
課題がみえてきた。高級レストランの即時予約サイトの利用は
まだ思うように伸びていない。他の宿泊予約サイトとの競合が激しく
なる中で、宿泊サイトの強化だけでなく新たな収益源の確率が求められている。(中村正毅)
「数を目標とした営業はしない。新たな挑戦で楽天などとの差別化を進める」と独自路線を
貫く森正文社長の考えは、旅行業に携わった身として参考になるべき点が非常に多く、
現在の自分に多くの影響を与えている。いろいろな宿泊予約サイトが淘汰された中での、
一休の『ブルーオーシャン』戦略とその経常利益率には、ただただ舌を巻く思い。
Posted by コンシェルジュ『J』 at 22:31│Comments(0)