岐路に立たされる、地方鉄道。

2007年01月20日/ ◎地方鉄道コンシェルジュ

  16日に放送された『日経スペシャル ガイヤの夜明け』(テレビ東京)は、「住民の足を守れ 
~消えゆくローカル線 再生への闘い~」

 人口減少時代に入った日本。地方では過疎化が進み、全国97社の地方鉄道(JR、大手私鉄除く)の
うち、75社は赤字経営に陥っており、存亡の危機に瀕している。これまで赤字補填してきた地方
自治体も赤字鉄道の財政的な支援に限界を迎えている。「存続か、廃止か」。住民の足を守るという
「公益性」と、これ以上赤字を増やせないという「経営の効率化」の狭間に揺れ、大きな岐路に
立たされている地方鉄道
の実態をリポートしたものだった。

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 03年、南海電鉄の廃止検討を表明を期に、沿線市民組織が存続運動を行い、6千人を越える
会員を集めて注目された、貴志川線
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 各市民組織の活動がかなりの盛り上がりを見せ、貴志川線存続の費用対効果分析を行って存続の
社会的な意義を科学的に裏付けるなどしたこともあり、地元の自治体関係者も存続の意思を固め、
鉄道用地などを南海から買い取ることなどを決定。
 運行主体を民間の企業等から公募することになり、公募締切最終日、「地方公共交通のあり方を
示したい」
と公募に応じたのは、岡山電気軌道など36社の企業グループ、両備グループ
小嶋光信社長。
 05年6月、岡山電気軌道の100%子会社として、「和歌山電鐵株式会社」設立。06年4月より
南海電鉄から貴志川線の運行を引継ぎ営業開始した。
 和歌山電鐵には、運営の最高意思決定機関として貴志川線運営委員会が設置されている。
この機関は地元自治体、沿線住民、沿線学校関係者、商工会と和歌山電鐵で組織されており、
その新しい試みに注目が集まっている。
 小嶋社長は、安全性を維持しながらの徹底した合理化体制と観光資源の発掘など、鉄道事業
再生に挑み、その道筋を既に作っている。
岐路に立たされる、地方鉄道。 一方、昨年2月、関東鉄道が廃止の方針を鹿島鉄道(茨城)。地元の
市民団体が存続を訴え、両備グループに運行委託を要請したが、
両備グループは地元の存続への熱意が低い現状を鑑み要請を
断った
(昨年12月、事業者の民間公募を行い、市民団体を含む
2事業者がこれに応じたが、いずれも不採用とし、07年4月の廃止が
決定した)。

 朝日新聞によると、旧国鉄ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道のうち、現在も運行中の全国
28社について、半数近い13社が開業以来、経常損益で赤字を計上し続け、うち2社は赤字を補う
はずの基金がゼロになっている。
 すでに05年、高千穂鉄道(宮崎県)が経営断念。06年、ちほく高原鉄道(北海道)、神岡鉄道
(岐阜・富山県)が廃止。07年も、くりはら田園鉄道(宮城県)が廃止決定。
明智鉄道(岐阜県):約5000万円の赤字(05年度)。計3億円の2つの基金が03年度に底をついた。
三木鉄道(兵庫県):約6300万円の赤字(05年度)。基金約1億2000万円が97年度でゼロに。
両社は現在、沿線自治体からの補助や借入金でしのぐ。
真岡鉄道(茨城・栃木県):05年度末の基金残高が約5500万円。
北条鉄道(兵庫県):05年度末の基金残高が約810万円。
両社はともに06年度中には基金残高が尽きる。
三陸鉄道(岩手県)は07年度、天竜浜名湖鉄道(静岡県)は08年度、若桜鉄道(鳥取県)は
09年度に基金が底をつく見込み。
樽見鉄道(岐阜県)、三木鉄道、若桜鉄道は、地元で廃線が検討・議論されている。
いすみ鉄道(千葉県)も同様。
 ただ、神岡鉄道は、筆頭株主の三井金属から計15億円の寄付を受け、観光鉄道として08年5月の
運行再開を目指す方針を発表した。
 
 地方はマイカーの利用が進んでいるため、当然地方鉄道は経営が厳しくなる。しかし、交通渋滞の
緩和
環境対策観光振興、そして進む高齢化などの要因で、地域にとって再び必要となる時が
来る
。一旦廃線とし、その後営業を再開するのは至難の業である。だから今、地域それぞれが「鉄道が
必要か否か」
を真剣に考えなくてはいけないはずだ。そして「鉄道を残す」と判断し、行政・地域住民・
企業が一体になった時
に初めて、「公益性」と「経営の効率化」の両立がはじめて実現
可能になる


岐路に立たされる、地方鉄道。 乗客数が減少しているという現状では今まで通りのローカル鉄道では生き残れない。そこで今注目され始めているのが、道路と鉄道、
両用OKな新型車両
「DMV」(デュアル・モード・ビークル)。
 マイクロバスを改造したディーゼル駆動の車両。車体を適正な位置に
誘導する「ガイドローラー」を使い、道路からレールへの切り替えも
約15秒とスムーズ。一般的な気動車1億3000万円に対し、DMVは
岐路に立たされる、地方鉄道。2000万円程度。燃料消費量も4分の1とコストの大幅低減が見込めるのが大きな特徴。
 既に富士市(静岡県)が、本州初のDMV走行実験を昨年11月に
実施。岳南鉄道と、現在、鉄道路線がないJR富士駅~新幹線
新富士駅を結ぶ公共交通の活用として、強い関心を寄せている。
 大型バスと鉄道の運転資格両方が必要な(運転士が2人いる)点など課題は残るが、「低コスト、低燃費」のDMVは、地方鉄道生き残りの新しい救世主となる可能性を秘めている
 今年は、地域の観光振興にも大きく左右する地方鉄道の動向に注目したい


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Posted by コンシェルジュ『J』 at 17:16│Comments(0)
 
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